明菜つながりで笠置シヅ子
昨日のコメントへの返信で"笠置シヅ子"と打った際に、数年聴いていない(明菜の88年ライブでのカバーは別だが)事に気付いた。
彼女の曲集はコロムビアから数種販売されている訳だが、「全曲集」と銘打った割には1枚ディスクで代表曲のみという物が多い。
アルバム作成する事なく、戦前から昭和30年までを歌手として活動して来た(以降は歌う事を完全に止めている)彼女であるが、SP盤を活動の主体としていた故に、そんなに吹込んだ曲数は多くない。

にも拘らず、コロムビアはきちんとした全集をCDでは一度だけしか販売していない。1989年にリリースされた「ブギの女王(3CD)」だけと言っていい。現在廃盤である。・・・が、密林では登録されていないのだが、HMVのデータでは2006年にリイシューされて価格も求め易くなっている。
同タイトルの1CD物もある(ジャケットまでほぼ同じ)のだが、3CDの(ほぼ)完全全曲集を買った方が良いと思う。
彼女はOSKから帝劇、日劇へと移り活動していく訳だが、ジャズシンガーとしては当時異例とも言える激しく踊り狂って歌唱する様は公安当局から目を付けられて、"マイクより1m以内で歌唱せよ"と規制を喰らった事もある。
戦前、「ラッパと娘」「ホットチャイナ」をヒットさせる。ジャズ禁止令が出た昭和18年、隠れジャズともいうべきエスニックソング「アイレ可愛や」を慰問で披露し、兵士間にこれまたヒットとなった。吹込みは戦後昭和21年である(確か、歌詞を時局に合わせている=G.H.Qによる検閲が凄まじかった為)。
戦後、「東京ブギウギ」以降の彼女の活躍は凄まじかった。「買物ブギー」の滔々と繰り広げられる歌詞はある意味ROCKの魁であり、今以て色褪せない。「銀座カンカン娘」は都会の女性の強さを顕わしと軽く言えるが、実にワイルドな、逆説的にセクシーな歌詞であるとも思っている。
「ジャングルブギー」は・・・エロ過ぎだ。
彼女の残る映像を見れば、将にダンスダンスダンスである。当時としては日本のジャズシンガー出身という意味では異例とも言える動きぶりであり、実にスイングしている。ジャジーで、ブギーで、スイングする彼女の歌唱、曲こそ演歌以外の日本歌謡の原点(エポック)である。
しかし、いい時代だ。ようつべだけでも映像がきちんと拾える。昔はレンタルヴィデオを見て聴いたもんだ。いずれDVDを買わなければいけない。
彼女は歌い踊り捲る歌手の先駆であり、明菜をBOWIEと同じくSOUND+VISIONのアーティストと考える自分にとっては、それ以前よりも笠置シヅ子の映像は高校の頃より手元に置きたかったからだ。彼女もまた伝え聞く事を考えればSOUND+VISIONのアーティストであった筈だからだ。
考えるに、明菜に"すんなり入れた"のは同時代ファンではなくとも彼女の歌を聴いて育った人間であったと言うだけではなく、ジャジーでブギーでスイングな笠置シヅ子を好きだったからなのかもしれない。
「買物ブギー」
この映像白眉は、現在カットされる後半。おっさんおっさんおっさんから"つんぼ"まで含まれる事である。自分も難聴持ちであるが、言葉狩りは嫌悪している。言葉を狩れば文化を"殺す"。現在CDで完全版の収録が現時点不可能というのは残念で堪らない。
表層的な人権運動には虫酸が走る。文化を殺すな。これだけは声を大にして言いたい。
「買物ブギー〜東京ブギウギ〜銀座カンカン娘」
笠置シヅ子の戦後の歴史がダイジェストで見る事が出来る。ナレーターがいらないのと、「買物ブギー」が途中なのは残念だが。
「歌う明星1」
「歌う明星2」
この映像は秀逸である。戦後の歌謡界を引っ張った笠置シヅ子、二葉あき子、淡谷のり子それぞれのカラーがきちんと描かれている。メインは笠置シヅ子と言っていい。
その中でも2に収録されている戦前の笠置の曲である「ラッパと娘」は秀逸で困る。スイングしてトランペットと笠置のボーカルの掛け合いは素晴らしい。「ヘイヘイブギ」もいける。
全編通して思うのは日劇ダンシングチームの素晴らしさだ。東宝の怪獣映画をこよなく愛した自分にとっては日劇ダンシングチームは欠かせない物がある。正直レビューチームといえども、日本女性のエロさ大爆発で、戦後直後はよかったんだなと俺は中学時代に思っていた訳だ。
HMVで笠置シヅ子を検索すれば、"同じ傾向のアーティスト"の項目に中森明菜の名がトップに上がる。彼女自身笠置シヅ子との接点はない(筈)。強いて言えば88年のFEMME FATALE TOURの昭和歌謡メドレーだ。
だが、明菜が本来持つジャジーでスイングな歌いっぷりを考えれば実に納得であり、HMVよくこうしたと感慨を深くせざるを得ない。
笠置のまねで脚光を浴びた美空ひばりが同項目に無い以上、やはり笠置シヅ子は美空ひばりとは一線を画す昭和歌謡の先鋭者だったと思う。
今日は笠置シヅ子の3枚のディスクを聴いた後に明菜を聴いて、日本歌謡の軌跡と終焉を感じつつ夜は酒を飲む。
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Comments
なかなか勉強になりますねぇ、この日記は。
懐メロを通り越した時代ですねぇ。
そういやぁ、ダウンタウンブギウギバンドの売物ブギってのもありましたねぇ。
「うっちゃえうっちゃえ」って。
倍賞千恵子はSKD出身です。
Posted by: TIGER | September 15, 2007 at 08:53 PM